文章術


実例を使って文章術をわかりやすく簡単に解説します。
メールやブログなど基本的なことから、小説の方法論まで考えます。

形式の選択


形式というのは、文章を書くときの見せ方のことです。
これには、大きな形式と小さな形式の二種類があります。

(大きな形式)
エッセイ 記録 小説 童話など
(小さな形式)
一人称 三人称 現在進行形 回想など
ここで形式の適不適を論じることはしません。
答えらしい答えもなく、あくまで文学論になってしまうからです。
ひとつだけ例をとって、実地に考えてみます。

祖母のことを書きたい。
戦争体験、家族との日常、施設にはいるまで……
主題がこのようなとき、どのような形式が可能でしょうか?

(エッセイ)
「わたし」(孫)の視点で語る。
【利点】「わたし」(孫)の思いや考えを中心に描ける。
【難点】戦争体験がまた聞きになり、祖母の思いまではくみきれない。
(記録)
特定の視点を消し、三人称で語る。
【利点】時間空間を自由自在に飛びこえ、戦争体験も老後施設もすべてを生々しく描ける。
【難点】祖母や孫の思いを主観的に語るのは難しくなる。
(小説・一人称)
祖母の視点で語る。
【利点】祖母を語り手とし、戦争体験や老後施設を祖母の思いとして描ける。
【難点】孫の思いを描く余地が減り、記録的でもなくなる。
(童話・三人称)
祖母の戦争体験を物語にする。
【利点】女の子(祖母)を主人公に戦争の悲惨を描き、現代の子供たちを対象にできる。
【難点】祖母の人生そのものを描くことはできなくなる。
ざっと考えただけで、これだけの可能性があります。
一番最後の童話の例のように、虚構化という手法を使えば可能性はさらに増えます。
とはいえ、それぞれに利点と難点があり、なにかを得るということはなにかを失うことです。
まったく同じ主題をあつかっても、形式ひとつで印象や結果は変わってくるからです。
形式の選択がいかに重要かということがおわかりいただけるかと思います。

重要なのは、なにを表現したいのか? なにを伝えたいのか?
まずはそれをはっきりさせます。
そのうえで、目的に最適な形式を選ぶことになります。

また、この形式はハイブリッド(混成)も可能です。
たとえば……

(1章・エッセイ風) 「わたし」(孫)視点で祖母を紹介する

(2章~4章・記録風) 視点を持たない客観的な記述

(最終章・エッセイ風) 「わたし」に戻ってしめる
こういったことは構成と演出のマジックになってきますが、いいとこどりはできるかもしれません。
ただし、この場合でもやはり失うものはあります。
なにかを具体化していくということは、可能性を切りつめてしぼっていくということだからです。

大きな意味でも、小さな意味でも、どのような形式が自分の書きたいことに最適なのか、よく考えてみましょう。