文章術


実例を使って文章術をわかりやすく簡単に解説します。
メールやブログなど基本的なことから、小説の方法論まで考えます。

情報の取捨選択


文章は現実ではありません。
どんなに緻密で写実的なものをと思っても、録画をしたり録音をしたりするようにはいきません。
まったくなにもかもをすべて書くというわけにはいかないのです。
必然的に情報の取捨選択をすることになります。

先日、買い物へ行きました。電車にのって30分のところ。最初にスーツのお店を見て、それからカジュアル系のお店、最後に帽子屋です。疲れたのでカフェで一杯。デパートのあまりの人ごみに、風邪をうつされました。
先日買い物へ行ったのですが、あまりの人ごみで風邪をうつされました。
枝葉の多い例です。
結局、服の話をするわけでもなく、電車・カフェでのエピソードを書くわけでもないのなら、この文章の要点は「買い物へ行ったら風邪をうつされた」というだけです。
ここまで極端になることは少ないでしょうが、メールやブログでもこれに近いことを意外とやってしまいがちです。

通行人に道をたずねた。この人物、顔は猿のようでありながら、黒髪はライオンのたてがみのよう。身長は低く肥満しているが、超一流のスーツに身を包んでいる。しかしその趣味は悪く、紫がかった生地に白のネクタイ、胸もとにはバラのコサージュ。こぶしをわなわなと震わせ、顔は紅潮している。
通行人に道をたずねた。ところがまったく不愉快な男で、こぶしをわなわなと震わせ、顔は紅潮している。どうやら怒っているらしい。
描写過剰の例です。
要するに言いたいことは、道をたずねたら不愉快な男で、どうやら怒っているらしい、ということだけです。
この通行人がただの脇役である場合、こまかな服装だの顔立ちだのはほぼ余計な情報といえます。
余計な情報を書きすぎると、主要な情報がかえってぼやけてしまいます。

このように、事実やあるがままをなにもかも書けばいいというわけではなく、ある主題なり表現上の目的があって、それに応じた情報の取捨選択となります。
余計な情報が多いほど要点がわからなくなり、くだくだしく退屈になりかねません。

情報の取捨選択が高次になってくると、全体の構成でも同じことが起こります。
この話題はまた別の機会にふれられたらと思います。