あだちしんご


あだちしんごの公式サイトです。
幻想小説からマジックリアリズムまで。

作品


死徴


――弟が死んだ。

最後の肉親を亡くしたわたし。
孤独死した弟の遺体を引き取り、遺品を片づけるため彼の部屋へ向かう。
若くして突然死した弟。
遺体の発見に立ち会った警察は現場になんら不審な点を認めなかった。
しかしわたしはある違和感を抱く。
弟は本を抱えて死んでいた。それも、まるで読みそうにない本を。
ページとページの間からはなんの変哲もないレシートがあらわれ、わたしはある奇妙な符合に気づく。
これは暗号だ。弟の死にはなにか秘密がある。
やがて解読された暗号には……

ミステリアスな短編小説。







さがしもの名人のなくしたもの


灰色の帝都。
まったく同じビル群に、交錯するアスファルト。
電車にゆられての長時間の通勤。
人々は12桁の番号で呼ばれ、うつむきがちに生活している。

貧民街の集合住宅には臣民番号9850-3419-6520の名で呼ばれる男が住んでいる。
さがしもの名人だ。

――迷子の子猫を見つけるくらい朝飯前だし、うっかり落としたコンタクトレンズだってお手のものである。小さなさがしものばかりではない。生き別れた家族、どうしても思いだせない単語、老人が若かったころになくした大切ななにか(それがなにかさえ忘れてしまっている)、なんでもござれだ――

ある日、彼のもとに宮廷からの密使がおとずれ……

ファンタジックな短編小説。





言葉

~作家紹介にかえて

言葉とはなんでしょう。
ニカラグア手話・イデオグロシアなどの事例では、子供たちは自分で言葉を発明しています。
イルカも言葉を持っていますし、森の木々も互いに交信して栄養素を分けあったりしています。
これは、日本語・英語などという以前に、なにか言葉になる前の言葉、言葉の言葉、のようなものがあることを予感させます。普遍的な、観念の世界。
このことは、日常的に犬や猫を観察していてもわかります。彼らは彼らなりに言葉を理解している。これは、言葉以前になにか共通の基盤がなければできないことです。

詩や物語にしかできないことはたぶんあるのでしょう。
表面的な道具だと思われている言葉を使って、本当の言葉、言葉にならない言葉に近づける。(嘘や詭弁、コピーなどのいかにあふれている時代でしょうか!)
文学ほど豊かで美しいものを、ほかに知りません。