あだちしんご


あだちしんごの公式サイトです。
童話のような幻想小説からマジックリアリズムまで。
自作のほかに依頼を受けて小説を書いています。

作品


死徴


――弟が死んだ。

最後の肉親を亡くしたわたし。
孤独死した弟の遺体を引き取り、遺品を片づけるため彼の部屋へ向かう。
若くして突然死した弟。
遺体の発見に立ち会った警察は現場になんら不審な点を認めなかった。
しかしわたしはある違和感を抱く。
弟は本を抱えて死んでいた。それも、まるで読みそうにない本を。
ページとページの間からはなんの変哲もないレシートがあらわれ、わたしはある奇妙な符合に気づく。
これは暗号だ。弟の死にはなにか秘密がある。
やがて解読された暗号には……

ミステリアスな短編小説。







さがしもの名人のなくしたもの


灰色の帝都。
まったく同じビル群に、交錯するアスファルト。
電車にゆられての長時間の通勤。
人々は12桁の番号で呼ばれ、うつむきがちに生活している。

貧民街の集合住宅には臣民番号9850-3419-6520の名で呼ばれる男が住んでいる。
さがしもの名人だ。

――迷子の子猫を見つけるくらい朝飯前だし、うっかり落としたコンタクトレンズだってお手のものである。小さなさがしものばかりではない。生き別れた家族、どうしても思いだせない単語、老人が若かったころになくした大切ななにか(それがなにかさえ忘れてしまっている)、なんでもござれだ――

ある日、彼のもとに宮廷からの密使がおとずれ……

ファンタジックな短編小説。







ゆめみるめざめ


夢のなかで夢をみて、ユウはさまよい続ける。
夢から夢へ、めざめからめざめへ。

ガイガーカウンターとガスマスクの転がる暗い部屋。
泣きじゃくる道化が語る、亡き暴君の物語。
どこまでのぼっても頂上にたどりつかない、成長を続けるらせん階段。
奴隷商人のらくだの足跡が物語をつむぎはじめる、無関心の砂漠。
ビル、道路、洋服、すべてがお金でできている大都市。
海賊が鉄くずをサルベージする、ゴミとがらくたの海。
段ボールでつくられた、ハリボテの神殿にあらわれる科学者と生活教信者。
崩壊した惑星から脱出した宇宙船のなかで眠り続ける人たち。

シュールな幻想の数々。
8つの物語からなる連作短編。





言霊

~作家紹介にかえて

言葉とはなんでしょう。
言霊(ことだま)という表現があるとおり、それは、なにか不思議なものです。
ニカラグア手話・イデオグロシアなどの事例では、子供たちは自分で言葉を発明しています。
イルカも言葉を持っていますし、森の木々も互いに交信して栄養素を分けあったりしています。
これは、母語、言語などという以前に、なにか「言葉そのもの」のようなものがあることを予感させます。

観念や認識。
ありきたりの現実の背後にひそむより深い現実。夢。
それらを洞察し、本当の言葉、「言葉そのもの」にすること。
詩や物語にしかできないことは確かにあります。
文学ほど豊かで美しいものを、ほかに知りません。